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高森明勅
2023.3.2 07:00皇統問題

古代日本のシナと異なる「女帝」公認と“女系”皇族の位置付け

「継嗣令」の“皇親(皇族)”を定義する条文
(第1条=皇兄弟子条)の中に「女帝の子」を巡る規定がある。
皇位継承問題に深い関心を持つ人ならば、恐らく知っているだろう。

男系限定論者の中には、それが『養老令』だけでなく、
少なくともそれに先行する『大宝令』にまで遡る事実を
知らない人がいるようだ(『令集解』に引用された『大宝令』の
注釈書「古記」に該当箇所を引いているので確実)。

更に先行する『飛鳥浄御原令』には「親王・内親王」という語は無かったが、
同様の趣旨の規定はあったと見る学説もある(成清弘和氏)。

該当条文について、ひとまず原文・読み下し文は省略して、
その趣旨を噛み砕いて少し丁寧に紹介すると、以下の通り。

《◎男性天皇の兄弟姉妹とお子様は皆、「親王・内親王」という称号
と待遇が与えられる。

◎本注=条文そのものに組み込まれた法的拘束力がある注として
→女性天皇のお子様も、父親の男性皇族の血筋(=男系)なら
「親王・内親王」より格下の「王・女王」となるが、男系では“なく”、
母親の女性天皇の血筋(=女系)によって、男性天皇の場合と同じく
「親王・内親王」とされる(女性天皇のお子様だけでなく、兄弟姉妹に
ついても男性天皇と同じように「親王・内親王」とされることが、
前出「古記」に記されている)。

◎それより血縁が遠い者は皆、「王・女王」という称号と待遇が与えられる。
◎親王を1世として4世まで(=①子・②孫・③曾孫・④玄孫)は
皇族の範囲に含まれるが、5世(⑤玄孫の子、来孫)の場合は「王・女王」
という称号を名乗ることはできるが、もはや皇族の範囲には含まれない》

これは、シナの律令を手本とした条文(具体的には唐の「封爵令」)
でありながら、僅かな“本注”(原文=「女帝子亦同」)を追加することで、
シナ男系主義(父系制)のもとでは決してあり得ない、「女帝」公認
のみならず“女系”による皇族の位置付けまで行っている。

シナとは異なるわが国の独自性・固有性は、このような点に
表れることに注目する必要がある。

奈良時代における元明天皇(母親)から元正天皇(娘)への
皇位継承が行われた当時の基本法は『大宝令』。

その規定に従う限り、現代における勝手な歴史解釈ではなく、
同時代における確かな事実としては、元正天皇は父親である男性皇族
(草壁皇子)の血筋(=男系)ではなく、母親である女性天皇(元明天皇)
の血筋(=女系)による皇族として即位された、としか理解できないはずだ。

これこそまさに「女系継承」。

プレジデントオンライン「高森明勅の皇室ウォッチ」は
3月1日に公開されました。
https://president.jp/articles/-/66876

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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